Nakajima's Laboratory

Our Challenge

触媒反応は、ものづくりの根本を成す技術です。例えば、化学産業において、様々な化成品の合成には触媒の利用が必要不可欠です。また、新しい触媒反応の開発は、時として新しい材料の開発に直結します。我々の研究室では、様々な触媒を精密にデザインし、前人未到の反応を開発することで、それを利用した新材料の開発にまで展開を図ります。

国の研究機関である産業技術総合研究所や企業との連携を通じて、実際に開発した触媒の実用化を目指す取り組みも行っているのも、大きな特徴です。

様々な人とかかわりながら、モノづくりの基礎から応用まで、自分の手で成し遂げたい、という皆さんの参加をお待ちしています。

テーマ1:卑金属錯体触媒の開発

現在化学産業界で活躍する触媒の多くは白金やパラジウムといった高価な貴金属が用いられています。一方で、鉄やコバルト、ニッケルなどは地殻中に多く含まれ、卑金属と呼ばれます。これらの金属は、安価であることから工業用触媒としての利用が期待されていますが、反応性が高くその制御が難しいなどの理由から、貴金属に比べると、触媒としての利用が未だ限定的といえます。一方で、卑金属からなる触媒は貴金属触媒にはない反応性など、多様な反応性を示すことも大きな魅力の一つです。我々の研究室では、適切な配位子をデザインすることで、卑金属ならではの新しい反応性の開拓を行っています。本取り組みでは開発した触媒基盤技術は、廃プラスチックなどの未活用資源の有効利用に向けた触媒反応の開発へと展開を図ることで、持続可能な社会の構築に貢献することを目指します。

テーマ2:有機ヘテロ元素化合物の精密有機合成

触媒を駆使した精密有機合成技術は、薬や電子材料など、様々な有機化合物の製造において活躍しています。一方で、ケイ素やリンといった重たい元素を含むヘテロ元素化合物は我々の身の回りで高機能材料として活躍しているにもかかわらず、これらの触媒を用いた精密合成の技術は未だ発展途上といえます。本研究では、従来の触媒技術では合成が困難、もしくは不可能であった様々なヘテロ元素化合物を精密合成する触媒技術の開発に取り組みます。ターゲットとする化合物は、シリコーンやシランカップリング剤といった、ケイ素産業界で実際に活躍する有機無機ハイブリッド材料です。これまで実際に開発した材料のいくつかは、現在企業と連携して性能評価を行っています。実験室で合成した化合物が、どうやって社会で役に立つようになるのか、自分の目で確かめるチャンスにも巡り合うことでしょう。

テーマ3:新しい有機ケイ素材料の開発

有機ヘテロ元素化合物の精密有機合成手法の開発に取り組む我々の研究室では、これまで合成が困難、もしくは不可能であったケイ素化合物の合成が可能となります。これを利用して、新しい規則性メソポーラス有機シリカ(PMO, Periodic Mesoporous Organosilica)の合成に取り組んでいます。規則性メソポーラス有機シリカ材料は、1999年に豊田中央研究所 稲垣伸二博士によって開発された新しい有機無機ハイブリッド材料です(Inagaki, S., Guan, S., Fukushima, Y., Ohsuna, T. and Terasaki, O., J. Am. Chem. Soc., Vol. 121, No. 41 (1999), pp.9611-9614.)。

これを触媒担体として利用することで、再利用可能で耐久性の高い固体触媒の性質と、精密設計可能な反応場という、従来の固体触媒では達成が難しかった均一系触媒の性質を併せ持つ、超高機能触媒の開発が可能となります。我々の有機ケイ素化合物合成技術を規則性メソポーラス有機シリカという新しい材料の開発に応用展開を図ることで、高機能触媒開発の未踏領域を切り開きます。